前戦オートポリス大会は、決勝レースが降雨と霧によってキャンセルとなり、ナビクルBuzz MKRACING にとって不完全燃焼な1戦に。しかし、開幕戦でのフィードバックを活かし、ベースをそのままにセットアップを施したクルマは、ドライバーのロマン・スタネックも好感触を抱いていた。予選前にはスピンを喫するというひとつの試練が襲ったが、一丸となって慎重に対応を進め、チーム発足から2度目の予選Q1 突破を果たした。予選には課題こそ残ったものの、次戦へと繋がる鍵も見え始め、着実に進化を遂げていた。そんな九州大会から約1カ月、ナビクルBuzz MK RACING はさらに歩みを続けるべく、次なる舞台、鈴鹿サーキットへと駒を進めた。
開幕戦と同様に1 大会2 レース制が設定された今回の鈴鹿大会。週末を通して雨の予報が出ていた鈴鹿サーキットは、搬入日となった21 日(木)も断続的に小雨が降るあいにくの天候で、22 日(金)の朝方まで雨を降らせた。ところが、スーパーフォーミュラの午前と午後の2度のフリー走行は、ともにドライコンディションでの走行が叶った。気温26 度/路面温度41 度という初夏らしい天候となり、午前の走行ではホームストレート上に追い風が吹くなかでセッションがスタート。鈴鹿サーキットは、シーズン開幕前の2月末に実施された2日間テストにて走行経験があったものの、今回は5 月後半ということもあり、気温や路面温度などコンディションが異なる。そのため、午前の走行枠を使用して序盤はスタネックの習熟のためロングランからスターして、その後はさまざまな試行錯誤をしながらセットアップに専念した。
いざ走り出すと「リヤが不安定な状態でブレーキのバイト感が少ない」という課題が見えてきた。そこで、このセッションではニュータイヤを使用せず、目先のタイムではなく、レースウイークを見据えたセットアップの最適化を優先。車両バランスの改善に集中した。そのため、午前は1 分38 秒775 の16 番手にとどまったが、ドライバーからは確かな前進を感じられるフィードバックが得られ、方向性としてはポジティブな内容となった。
午後のセッションは気温25 度、路面温度38 度というコンディションのなかでスタートし、終盤にはこの週末で初めてニュータイヤを投入し、アタックシミュレーションへ移行した。ステアリングを握るスタネックは、セクター1 で全体ベストを記録。マシンのフィーリングも改善傾向にあり、上位進出を期待させるアタックとなっていた。ところが、勢いそのままにデグナーカーブ進入し、深く縁石へ乗ったことでマシンの挙動を乱れ、そのままクラッシュバリアへ接触。これにより赤旗中断となった。幸いにもドライバーに大きな怪我はなく、自力でマシンを降りたが、車両はフロント周りにダメージを負っていたため、その後の大切なOF シミュレーションができる、組み分け走行への参加は叶わなかった。結果として、前戦に続きニュータイヤでの十分なデータ収集ができないまま第4 戦本番を迎えることとなった。
走行開始となった初日から、一夜明けて第4戦開催日を迎えた。前日のクラッシュの影響を受け、ダメージは決して小さくなかったが、メカニック陣が深夜に及ぶ修復作業を敢行してくれて、チーム発足以来とも言える大きなアクシデントに直面しながらも、全員が持てる力を結集し、無事にマシンをコースへ送り出した。
23 日(土)は、朝から曇天となり時折小雨がぱらつき、予選は気温20 度/路面温度22 度と、前日から大きく低下した難しい環境となった。予選では、多くの車両が1周のアタックを挟み、ニュータイヤへ交換してアタックに臨むことが多いが、我々は戦略を変更。セッション開始時からニュータイヤを装着し、混雑を避けるためにコースインをギリギリまで遅らせる作戦を選択した。狙いどおり、クリアラップを確保した状態でアタックへ移行する。
タイヤを丁寧に温めながら周回を重ね、4 周目に渾身のアタックラップへ入る。セクター2 では一時全体ベストを記録するなど、高いポテンシャルを示したが、スプーンカーブでわずかな乱れが生じたことで、後半セクションで十分にタイムを伸ばし切れず、最終的には1 分39 秒194。結果は11 番手となり、惜しくもQ1 突破には届かなかった。スーパーフォーミュラの予選では、ニュータイヤでの“一発”を完璧にまとめ上げる精度が求められる。今季ここまで、ニュータイヤ投入時にスピンやクラッシュなどアクシデントが重なり、十分な走行データと経験を積み切れていない我々にとって、今回の予選はその難しさを改めて痛感するセッションとなった。
スタネックも「メカニックのおかげでクルマは綺麗に修復されていて、しっかりと走れる状態でしたが、予選で良いパフォーマンスが出せないというのは、自分が予選で攻めきれなかった結果なので、とても悔しいです」と振り返った。課題が浮き彫りとなったが、休む間もなく第4戦決勝レースを迎えることになるため、ひとつでも多くポジションアップを狙うため、決勝レースへと照準を当てた。
予選を終え、決勝レースの間にはピットウォークが行われ、開始と同時に多くのファンがスタネックのサインを求めて列を作っていた。さらに今回は、我々のメインスポンサーである、車査定・車買取サイトのナビクル公式キャラクター『なびくるみ』ちゃんも登場。子どもたちをはじめ、多くの来場者との交流でパドックを盛り上げ、チームに笑顔と活気をもたらしてくれた。そして、その熱気冷めやらぬまま約2 時間後、いよいよ第4 戦決勝レースの刻を迎える。スタート前には、伊勢湾から吹き込む潮風が流れ込み、気温20 度/路面温度24 度というコンディションに。空は厚い雲に覆われ、いつ天候が崩れてもおかしくない、不穏な空気が漂っていた。
21 番手からスタートを切ったスタネックは、抜群の蹴り出しを披露。事前にドライビングアドバイザーの木村偉織から受けたアドバイスをもとに、スタート直後からS 字区間でのポジショニングに細心の注意を払いながら、オープニングラップだけで17 番手まで一気にジャンプアップを果たした。しかしその後、マシンバランスとレースペースに苦しむ展開に。翌周のホームストレートでポジションをひとつ失うと、さらに小さなミスも重なり、一時は23 番手まで後退してしまう。
21 番手からスタートを切ったスタネックは、抜群の蹴り出しを披露。事前にドライビングアドバイザーの木村偉織から受けたアドバイスをもとに、スタート直後からS 字区間でのポジショニングに細心の注意を払いながら、オープニングラップだけで17 番手まで一気にジャンプアップを果たした。しかしその後、マシンバランスとレースペースに苦しむ展開に。翌周のホームストレートでポジションをひとつ失うと、さらに小さなミスも重なり、一時は23 番手まで後退してしまう。
ここで流れを変えるべく、流れを変えるべく早めの勝負に打って出る。タイヤ交換義務が可能となる8周目にピットインを敢行。フレッシュタイヤへ交換し、アンダーカットによる追い上げを狙った。すると、その直後から鈴鹿の空模様が急変。上空から雨粒が落ち始め、15 時05 分にはウエット宣言が提示される状況となった。レースは11 周目へ突入していたが、周回を重ねるごとに雨脚は徐々に強まり、各所で路面に水のラインが浮かび上がるコンディションへ変化していく。その影響もあってか、19 周目に1 台がスピンを喫してクラッシュ。SC(セーフティカー)導入となり、これを機にピット作業を済ませていないチームは一斉になだれ込み、レースは大きく動き始める。
23 周目からリスタートを迎えたが、スタネックはコースの状況を見極め、天候が悪化することを見越して、再びピットインし、レインタイヤへ交換。まさに“一か八か”のギャンブルとも言える戦略に打って出た。隊列最後尾からコースへ復帰し、状況を見守るなか、再び1 台がクラッシュ。これにより2 度目のSC が導入され、各車は続々とスリックタイヤからレインタイヤへ交換するためピットへ雪崩れ込んでいく。結果として、スタネックは“レインタイヤ交換組”の先頭へ浮上。ピットには緊張感が走り、「このまま雨量が増えれば、初表彰台、もしくは優勝も見えてくる」そんな期待が現実味を帯び始めていた。
SC 先導のままレースは刻々と周回を重ねていくが、雨が強まることを願う我々のそんな思いとは裏腹に、周回ごとに雨脚は弱まりつつあった。残り4 周でレースが再開されると、路面コンディションに勝るスリックタイヤ勢が一気にペースアップ。レインタイヤに傾きかけていた流れは、再び難しい方向へと動き始めた。それでもスタネックは粘り強く食らいつき、チーム発足後の最上位となる8位でチェッカーを受けた。スタネック自身にとっても最上位となり「SC のタイミングでコースが濡れ始め、後方スタートだった自分たちは失うものが少ないと思い、レインタイヤに変えようとチームに伝えました。結果的にいい判断だったと思います。もっと雨が降れば、ポディウム争いにも加われたかもしれないと思うと残念ですが、それでも最善を尽くしたので嬉しいです」と嬉しさを語った。
また、ドライビングアドバイザーの木村も「スーパーフォーミュラの空力の特性で、どういう位置取りをすればオーバーテイクができるか、主にS 字の立ち回りを細かく教えていました。自分の経験が役に立てて良かったです。ただ、オーバーテイクシステムの使い方はスタネックの課題でもあるので、今後はそこの改善方法をより細かに緻密に伝えていこうと思っています」とコメント。課題は残っているものの、この結果は我々にとって確かな前進であり、チーム全員の士気を大きく高める一戦となった。
波乱のレースを終えた鈴鹿サーキットは、夕方から夜中にかけて強い雨が降り続いていた。第5戦開催日の24 日(日)は薄暗い雲が上空を覆っていたものの朝から暖かな空気に包まれ、前日から一転、気温24 度/路面温度33 度のドライコンディションとなった。予選Q1A 組に出走したスタネックは、フロントのみニュータイヤを履き、アウト・インでリヤの2本のみ交換してアタックへと備え、前日同様、混雑を避けながら早いタイミングでアタックへ入る狙いだった。4 周目、スタネックは1 分38 秒578 をマークし、一時は暫定トップに立つ。大きなミスはなく、ラップとしてはまとめ切ったものの、各セクターで思うようにタイムを削ることができず、最終的には9 番手とQ2 進出には届かなかった。
チームとしては予選Q2 進出に手応えを感じていただけに、悔しさが残るものとなってしまった。長谷川監督は「セットアップの変更をし、車両バランスは全体的に改善しましたが、グリップ不足に悩まされ、予想よりもタイムが出ていませんでした。スタネックの課題もありますが、チームとしても十分に攻められるようなクルマを渡すことができませんでした」と振り返った。予選では引き続き課題を残すこととなったが、それでも週末最後のレースはまだ残されている。チームは第5 戦決勝へ向け、限られた時間のなかでデータを洗い直し、セットアップと戦略の両面から徹底的に準備を進めていった。
3 万3000 人が訪れたこの日のピットウォークでは、前日をさらに上回る数のファンがスタネックのもとへ訪れ、サインや写真撮影を求める長い列ができあがった。さらに、ナビクル、(株)エイチームホールディングス様のスポンサー様はじめ、多くの関係者の皆様にもピットへ足を運んでいただき、チームとしても改めて大きな期待と支えを実感する時間となった。その想いを胸に、我々は決勝レースへと臨んだ。18 番手からスタートを切ったスタネックは、好反応を見せるスタートを決め、オープニングラップで早くも1 台をオーバーテイク。直後にはSC(セーフティカー)が導入される波乱の立ち上がりとなったが、リスタート後は大きなアクシデントもなく、レースはクリーンな展開で進んでいく。
そのなかでスタネックは、第4 戦で課題としていたOTS(オーバーテイクシステム)を序盤から積極的に活用。果敢なアタックを繰り返しながら、小出峻選手(ThreeBond Racing)との激しいポジション争いを展開した。そんな中、小出選手が先にピットに入ると、スタネックはコース上でステイする戦略をとり、その2周後の25 周目にピットイン。そのタイミングで前に出ることは叶わなかったが、すぐ真後ろに迫りテール・トゥ・ノーズの緊迫した戦いが続く。スタネックはフレッシュタイヤのアドバンテージを活かし、プレッシャーをかけ続け、残り2 周、ついに渾身のオーバーテイクを成功。スタネックもコクピットの中で思わずガッツポーズ。チームにとっても、この週末積み重ねてきた挑戦と改善が実を結んだ瞬間だった。
その後も前方車両との差を懸命に削り取り、ギャップは2.5 秒差まで縮まったものの、追撃はあと一歩及ばず、15 位でチェッカーを受けた。残念ながら2戦連続でのポイント獲得には届かなかったが、ようやく“スーパーフォーミュラらしい”、そして“スタネックらしい”レースを展開することができたことで、OTSの使い方やレース中のバトルなど、チームとしてもドライバーとしても確かな成長を感じられた。スタネックも「とても楽しく、おもしろいレースでした!」と笑顔。本人も成長を感じているようで、今シーズン中盤以降の成長ぶりが楽しみなところだ。
週末を通して異なるコンディションで多くの走行データを蓄積したことにより、マシンセットアップの方向性についても明確なヒントを掴むことができ、チームとしても非常に実りある鈴鹿大会となった。次戦は再び静岡県・富士スピードウェイに舞台を戻し、7月17~19 日に富士大会が開催される。第3戦オートポリスで中止となった決勝も19 日の午前に組み込まれ、3レース開催と怒涛のレースウイークが待ち受けている。そして、その戦いへ向けた大きな鍵となるのが、6 月30 日~7 月1 日に同じく富士スピードウェイで実施される公式テストだ。我々にとって、今後のシーズンを左右する極めて重要な機会となる。この鈴鹿で得た経験と課題を確実に次へ繋げ、データ収集とマシン開発を進め、さらなる結果を掴むため、挑戦を止めることなく次戦へと臨む所存だ。
第4戦では予選で上手くまとめ切ることができませんでしたが、決勝では木村アドバイザーのアドバイスのおかげでとても良いスタートを切ることができました。S 字やスタート直後のバトルの位置取りに気をつけながらポジションを上げることができてとてもよかったです。ポイントを獲得でき、チームの最高位も嬉しいですが、クルマのパフォーマンスに対して、もっといい順位を取れるようなポテンシャルはあると思っているので、そこを目指していきたいです。
第5戦もOTS の使い方を教えてもらい、うまく使いながらオーバーテイクできたのは良い成長でした。一方で、この3大会を終えて予選で一発のパフォーマンス不足が課題だと感じています。次のレースこそはしっかりと予選でいいポジションを獲得したいです。そうすればレースでもいい結果がついてくると思うので、テストを活かして、さらに自分も最後までパフォーマンスを全力で出し切れるように準備を進めていきます
初日から車両のバランスがあまり良い感触が得られず、クラッシュもあったので、思い描いていたランプランが遂行できず、良いリズムに乗れなかったのは反省点です。第4戦の決勝では、その遅れをとり戻せず、自信を持った確実なセットアップをうまく合わせられず、多少マシンバランスに苦戦したものの、雨が降った際の、スタネックの素早い判断とチーム全体のコミュニケーションがとても功を奏し、このポイントを生んだと思っています。
第5戦で予選Q2 進出を果たせなかったのは残念ですが、決勝ではレースペースも良く、方向性が見えたので、順位以上に収穫が多いレースでした。OTS の使用するタイミングについても木村選手のアドバイスを元に、吸収してくれているので彼の成長も垣間見えました。次の富士テストはチームにとってとても重要なものとなります。せっかくのテストなので、様々なことを試しながらしっかりと検証をして、残りの大会に備えていきたいと思っております。
この鈴鹿大会には、ナビクル Buzz MK RACING のメインスポンサー様であります、「ナビクル」の株式会社エイチームホールディングス様の林社長はじめ、たくさんの社員の皆様に応援に駆けつけていただき感謝申し上げます。その他にも、いつもあたたかく応援いただいているスポンサー様、関係者の皆様にもご来場いただきました。
今大会も本当にありがとうございました。改めて本当に多くの皆様に支えられて今この瞬間があることに感謝してもしきれません。いつもありがとうございます。引き続き応援のほど、よろしくお願い申し上げます
















